杉原一司歌集刊行記念

【杉原一司一首評/笠木拓】お前の掌《て》に掌《て》を重ねあふみぢめさは知りゐてなほも星くらき夜を

(執筆者:笠木拓)   お前の掌てに掌てを重ねあふみぢめさは知りゐてなほも星くらき夜を 杉原一司  わたしなら「星明あかき夜を」にするだろう。天上でまぶしくすずしげに、清潔に光る星々と、求め合うからには互いに手をくださずにいら...
詩歌作品

【短歌20首】旅 — 盛田志保子

旅盛田志保子 駅なしにかなわぬことのいくつかを思えば燃えるような心臓 生きたまま仕留めた夏を数か月先の未来に置きにいく夢 肝試しのマインドに近いあの闇は本物だって言い続けたい 朝早く起きれば山に登る日の暗い覚悟と聳える時間 意...
異郷幻灯

【異郷幻灯】05.新潟——ながや宏高

旅先で訪れた町や、行ったことはないのになぜか心惹かれる場所、また、旅を詠った詩歌について……。そんな、心の中にある「異郷」をテーマに、自由な切り口からエッセイを書いていただくリレーエッセイ企画、第五回は歌人で、杉崎恒夫の調査・研究をされて...
杉原一司歌集刊行記念

【杉原一司一首評/狩峰隆希】硝子器の罅を愛すとあざやかに書けばいつしか秋となりゐる

(執筆者:狩峰隆希) 硝子器の罅を愛すとあざやかに書けばいつしか秋となりゐる 杉原一司 長い休みが終わったり夜のあいだだけ冷えるようになったり、季節の変わり目にはいくつもの兆候があるけれど、ここでは「硝子器の罅を愛す」という一...
杉原一司歌集刊行記念

【杉原一司一首評/髙良真実】雲などはしやくとり虫のやうに浮き地平にとどく脊髄の翳

(執筆者:髙良真実) 雲などはしやくとり虫のやうに浮き地平にとどく脊髄の翳 杉原一司  連作「内部について」の二首目である。『杉原一司 メトード歌文集』(杉原一司歌集刊行会, 2020) p10より引用した。発表されたテクスト...
杉原一司歌集刊行記念

【杉原一司一首評/川野芽生】花びらをあなたの胸へむけて射つ自動拳銃《コルト》かなにか春のまぼろし

(執筆者:川野芽生) 花びらをあなたの胸へむけて射つ自動拳銃コルトかなにか春のまぼろし 杉原一司 花びらを弾の代わりに撃てば、血の代わりに紅の花びらがあなたの胸に散る。銃弾を込めたそのとき、死までもが約束された結末として銃に装...
杉原一司歌集刊行記念

【杉原一司一首評/ 三上春海】時計など持たないわれは辭典とか地圖とかを讀み樂しく過す

(執筆者:三上春海)   時計など持たないわれは辭典とか地圖とかを讀み樂しく過す 杉原一司  このひとにとって「辭典とか地圖とか」を読むことはほんとうに楽しそうだ、ともおもうし、同時に「でも、そんなことがほんとうに楽しいのだろ...
おしらせ

【お知らせ】ウェブストア・一首評企画を始めます。

「うたとポルスカ」では、間借り中の下北沢BOOKSHOP TRAVELLERの休業、また第29回文学フリマ東京の開催中止に伴い、期間限定でウェブストアを開設します。 当面は、5月以降に展開予定だった『杉原一司歌集』『杉原一司メトード...

【ブックレビュー】『サーキュレーターズ 短歌時評』(土岐友浩、2019年)

(執筆者:温) 詩の読者のための短歌時評という機会を与えられて、僕が自分に課したことはふたつ。ひとつは現代短歌の注目するべき作品を、できるだけ幅広く取り上げること。もうひとつは短歌形式の本質を掘り下げていきながら、詩との差異を明らか...
詩歌作品

【短歌12首】somewhere — 法橋ひらく

somewhere法橋ひらく エネオスの白いひかりを過ぎていく冬の遅番勤務のあとで もういちど護られたいなレギュラーと窓と灰皿若かった父に 満タンになってしまって空っぽの、来年の冬ここにはいない        * 角切りの牛肉ビーフがマジ...
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