「うたとポルスカ」のこれまで(まとめ)

未分類

いつも「うたとポルスカ」を読んで/にお越しいただき、ありがとうございます。
早いもので、この2021年11月で「うたとポルスカ」は2周年を迎えました。この2年間にはたくさんの短歌が発表されたり、すばらしい歌集が出版されたり、感染症が蔓延したり、大きいスポーツの大会が延期になったり、大きいスポーツの大会が開催されたりと、実にいろいろなことがありました。

せっかくの機会なので、運営メンバーで「うたとポルスカ」について、どんなきっかけで始めたのか、この2年間でどんなことをやってきたのか、などなど座談会形式でまとめてみました。

今後とも「うたとポルスカ」をよろしくお願いします。

「うたとポルスカ」運営メンバー

吉田恭大(よしだ やすひろ)
@nanka_daya 「北赤羽歌会」「うたとポルスカ」運営。塔。第一歌集『光と私語』(二〇一九年・いぬのせなか座)。

睦月都(むつき みやこ)
@xen_00 かばん所属。「神保町歌会」「うたとポルスカ」運営。

温(あたむ)<記>
@mizunomi777 「GEM」同人、「うたとポルスカ」運営。

一箱書店とウェブサイトのはじまり

吉田 「うたとポルスカ」も2周年を迎えたということで、この機にここまでの活動を振り返っておこうと思います。そもそも「うたとポルスカ」って、下北沢に一箱書店もあるし、ときどき更新されるウェブサイトもあるしでよくわからない……と思われている気がするので、ざっくりとはじまった経緯とか、これまでやったことをまとめておこうかと。

睦月 「うたとポルスカ」、いちばん最初はあれだよね。なんかの歌会が終わったあとの飲み会で、私がだや(吉田)さんに「一緒に本屋やりません?」って誘われたんだよね。それが2019年の春くらいかな。

 居酒屋で始まってるんですね。

吉田 そうそう。もともと『光と私語』を売れる場所を自分でも作りたいなと考えておりまして。そのとき、BOOKSHOP TRAVELLER(以下BST)という本屋さんが『光と私語』を置いてくれているらしいと聞いて、ホームページを見てみたら「ひと箱店主募集中」っていうのが目に入ったんですよ。要するにお店の本棚をひとつ借りて、そこで自由に本を並べて販売してよいという。いいじゃん、ということでさっそくBSTに行って、店主の和氣さんに、「すみません、本棚借りたいんですけど。あと『光と私語』の作者です」って挨拶しに行った。

 その2つが同時なことある?

吉田 それで、睦月さんも一緒にどうかなと思って、声をかけました。

睦月 私もおもしろそうと思ったんだけど、数か月後にポーランドに留学する予定があったから一緒に本屋をやるのは難しかった。一方で、私はウェブサイトを作りたいと思ってたんだよね。ポーランドに留学したら今みたいには短歌を読めなくなっちゃうから、好きな人たちに原稿を依頼してそれを読む場所を作りたいと考えてた。そう言ったら、じゃあ本棚とウェブサイト両方やろうということで、「うたとポルスカ」ができた。

 「じゃあ両方やろう」っていいノリですね。僕は少しあとから入ったので、その辺の経緯はちゃんと聞いたことなかったな。

吉田 温さんは最初、りんてん舎の歌会記とか、書評を書いてもらってたよね。いつから運営側に入ったんだっけ。

 具体的な時期はあんまり覚えてないけど、吉祥寺の「ゼノンサカバ」で飲んでるときですね。割と初期。どうせよく飲んでるし、じゃ一緒にやろうぜって話になった記憶がある。

吉田 大事なことは、飲んでるときに決まるんですね。

睦月 ろくでもない集まりだな。

活動しはじめ

吉田 最初に「うたとポルスカ」について告知したのはガルマン歌会でした。この歌会って、ガルマン(得票数首位)になったら場所や時間を自分の好きなところに決められる、ってシステムがあって。せっかくだからガルマンを取って、会場をBSTに指定して告知しようと、気合を入れて狙った覚えがある。

 取りに行ったんだ(笑)。それで取ったんですか?

吉田 取ったよ。〈わたくしの眠たさ博物館の中の海流を示す大きな模型〉ですね。

睦月 すごい取りに行ってるね(笑)。

吉田 それでBSTが、当時は下北沢の駅の反対側にあったんだけど、そこを会場にさせてもらって、歌会の前後に「こんなのやります」って話をその場で。それが世に出た最初かな。

睦月 そういえばそのガルマン歌会の直前に、だやさんと100円ショップに行ってPOPとか作ったな。みんなが来る前に体裁を整えようってことで。なんか、文化祭っぽい感じだったよね。っていうかそう、あのときは今みたいにロゴをまだ作ってなかったからさ。POPに私の手書きで「うたとポルスカ」って書いてて、それがしばらくそのままだったんだよ! あれ恥ずかしかった(笑)。私、嫌だからだやさん書いてよって言ったら、「私の字よりマシでしょ」とか言われて。

開店当時の本棚

吉田 そのときには自前で用意できた『光と私語』とか『tanqua franca』のほかに、『時間のかかる短歌入門 ①』とか『うに』とか稀風社の同人誌をいくつか、『短歌ホリック』、木下こうさんの『体温と雨』とか、いろいろな本を並べさせてもらって。基本的には、商業のほうで流通してる歌集はほかでも買えるから、私たちは私家版とか同人誌とかその辺をメインで取り扱おうっていうのを考えていました。そこから一人ひとり声がけして扱う本も増やしていって、BSTでちょいちょいフェアもやらせてもらうようになった。「ポルスカの日」とかもね。

睦月 ウェブサイトのほうは、温くんにまとめてもらったりんてん舎の歌会を2019年の10月5日にやったのが最初の活動。

 あれ面白かったですね。終わったあと、睦月さんが見つけた「もきち」っていう居酒屋に行って、茂吉じゃん!ってみんなで盛り上がったのをよく覚えてます。

睦月 2019年11月11日に「はじめに」を公開して、それから依頼していた椛沢知世さんの短歌連作とか石原ユキオさんの「異郷幻灯」をもらって、アップしていったんだと思う。

 椛沢さんの短歌連作「りんごの味」は、後々だやさんがこの中の歌で一首評を書いてましたね。

 そういえば「異郷幻灯」ってどういう気持ちで始めたんですか? 短歌のウェブサイトを作ろうってところから、「異郷」をテーマにしたエッセイってちょっと遠い気がするんですけど。

睦月 これはあれですね、私がポーランドに引っ越したばかりの頃で。一人で海外にいるのがさみしいから、こういう話を募りたかったんだよね。

 同志を。

睦月 そう、同志を。こないだね、最近友達になった人が、職業を聞いたら占い師っていうから、私の星を見てもらったの。そしたら第一声で「海外に縁がある星ですね」って言われて。ポーランドに留学してたとか、そんなこと全然話したことなかったのにだよ。「地に足がついてなくて、ふらっと旅とか、海外に行っちゃうんだよね」って。そんなの占いでわかるんですか!?ってびっくりした。私のことを長く知ってる人?みたいな。

吉田 私と温さんで、「わかるわかる、睦月さんそういうとこあるよね」って相槌打ちたいね。すごいしたり顔で。

 その場合、僕とだやさんはどこにいるんですか? 占いブースに一緒に入ってるの?

睦月 まあでも占いじゃないんだけど、同じ匂いのする人ってわかるというか、なんとなく「異郷」を持つ人っているなという着想でしたね。石原さんの後にも、水原紫苑さん、山崎聡子さん、川野里子さん……と豪華なメンバーに寄せていただいて。

 あんまり安易に作風に結びつけるのも考え物だけど、どことなく短歌にも共通点がある気がしますね。なんか、「心ここにあらず組」って感じがする。

睦月 「あくがれ」みたいなね。

吉田 「異郷幻灯」もぜひ続けていきたいですね。数少ない「ポルスカ」要素だと思うから(笑)。

 数少ないというか、今や唯一の「ポルスカ」要素ですね。

睦月 そう、その話の流れで言うと、かつてその「ポルスカ」要素だった私のポーランド日記、ぶちっと切ってて申し訳ない。

吉田 好き勝手やってるサイトだからね、まぁ、無理のない範囲で。いいよ、突然「ポーランド“夢”日記」が始まっても驚かないですよ。

 どういうこと? 空想で、まだポーランドに住んでる設定で書き続けるってこと?

睦月 突然、しれっと空想を始める感じね(笑)。ポーランド日記、久々に読み返したらなんか、「えらい綺麗なとこにいるなぁ……」って思いました。すごい、クリスマスの話とかも、夢みたいな、ちょっと悪夢っぽい感じがして。

 悪夢なんだ。

睦月 家系独自の風習で作られた、オオカミのクッキーとか……。私、ポーランド選んだの直感だったんですけど、よかったんだろうなと思いますね。

コロナ禍に意外とやることが増えた

吉田 そういう感じでいろんなコンテンツを作りつつ、一箱書店のほうではいろいろと仕入れつつ、そうですね。2020年の4月からはいわゆるコロナ禍が始まってしまった。

睦月 私もたまたま年度末に、もろもろの事情で日本に一時帰国したら、今度はポーランドに帰れなくなって。

吉田 本当は歌会もたくさんやりたいなと思っていたんだけど、それも難しくなったし、そもそもBSTが休業してしまいまして。ちょうどこの時期、私が企画に携わっていた杉原一司の歌集が出るということも手伝って、この機にウェブストアを立ち上げました。杉原一司歌集については一首評もたくさん依頼して、ウェブサイトに公開しましたね。

 10人というけっこうな大人数に原稿をもらいました。

吉田 だから意外と、コロナ禍にやることが増えたんだよ。

睦月 それまで一箱書店とウェブサイトはわりと個別に、好きなようにやってたから、初めてクロスメディア化したというか、本棚とウェブどちらも持ってる強みが出ましたね。ウェブサイトはけっこう私の時間やモチベーション次第なので、2020年4月~6月の杉原一司一首評企画からしばらく間が空いちゃってたんだけど、11月に久々に掲載したのが谷川由里子さんの「ラベンダー・サンダー」でした。谷川さんには2020年1月にも「ドゥ・ドゥ・ドゥ」という連作を寄せてもらっていて、すごく評判がよかったんだよね。

吉田 そういう縁もあって、左右社さんから出版された谷川さんの第一歌集『サワーマッシュ』を、「うたとポルスカ」でも先行販売させてもらいましたね。発売に合わせてフェアも組みました。谷川さんご本人も来店してくれたし、いろんな方に手に取っていただきました。フェアと同時並行で、新刊歌集の選書もやらせてもらって。結果的に、いまBSTが下北沢で一番詩歌の品揃えが多いお店になったのではないかしら。選書についても、今後も続けられたらと思っています。

引き続きやっていきます

吉田 こうしてハコが整ったから、今後いろんなことができるよねっていうのは、割と強みだと思う。

睦月 なんか思いついたときに、じゃここでやろうっていうのができるしね。

 歌会記もこれから、いろんな人に声をかけてやりたいなと思ってます。

吉田 基本的にみんな、それぞれ活動しているわけだし。だから別にね、「うたとポルスカ」歌人です!みたいなことにはなってないじゃん。

 「うたとポルスカ」歌人です!って、こないだの「トートロジー歌人」みたいな?

 でも確かに、たとえば「うたとポルスカ」所属って感じはしないですね。

睦月 そうですね。所属っていうより拠点としてある感じ。だから、私たち仲良くもなってないけど、仲悪くもなってないね(笑)。

吉田 この間の歌会のときにもすごく思ったけど、それぞれやってることも全然違うし。

睦月 全員が違う方向を向いてやってるから、逆にそれがいいんでしょうね。お互い放任主義というか。

吉田 「うたとポルスカ」を短歌的なキャリアというか、旗印として使っていくつもりがないから。

 何をやるにしても、自分用って感じがありますね。自分が読みたい人、歌会をやりたい人に声をかけて、自分が楽しい、みたいな。

睦月 「公共の福祉」みたいなことやらないもんね。

吉田 短歌を盛り上げたいとか短歌人口を増やそうとか、そういうことじゃなくて、個人的な動機でやっていったほうが続くなって思いますね。そういう大義みたいなものを引き受けちゃうと私はできないから、私が読みたいとか、やりたいとか、そのために使えることが重要かな。だから、好きな人にオファーするとか、好きな本を置かせてもらうっていうことに価値があると思う。まぁ今後の活動も、そんなノリでやっていければと思ってます。では、今日はありがとうございました。

 ありがとうございました。

睦月 ありがとうございました。

(2021年10月4日、ZOOMにて)

タイトルとURLをコピーしました