【短歌12首】りんごの味 – 椛沢知世

詩歌作品

    りんごの味    椛沢知世

タピオカに生まれるはずが間違えたようなニキビを眠るまで触る

手首から慣れないにおいいいにおいいつもより顔まわりを触る

目がかゆいのは春か秋  友だちの誕生日だいたい覚えてる

かわいいと人に言われてつぶやけば口からスクランブル交差点

立ち止まるわたしを水溜まりのように人が避けてゆくよありがとう

指で押す指よりひろく黒ずんだアボカドそういうものと知ってる

木曜日のひびきが好きで有休をとるなら木曜日に休みたい

はちみつ入り黒酢飲料はりんご味ふたくちめからりんごと分かる

ベッド下にたくさんのノートがあってわたし日記の上で寝ている

吐く息がしろく光ってうつくしい傘回しの鞠みたいに踊る

四季のある空き地にショベルカーがいてなんかヒーローのポーズをしたい

みどりいろのエノコロもきんいろもないわたしの声で野良猫を呼ぶ

◇椛沢知世(かばさわともよ)
1988年生、塔短歌会所属。同人誌「砂糖水」「aima-kaima」「半券」に参加。

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