【きょうは傘とか歌ありがとう 2】高島裕『盂蘭盆世界』 ― 笠木拓

 青天のごとき声もて問ふべきに 9条改正論の萎え魔羅  高島裕『盂蘭盆世界』  記憶が正しければ、歌会でこの歌を読んだのは2016年の春だった。 集団的自衛権の行使容認を含む、いわゆる安保法制が施行されてまもなくのこと。それが国益だ...
詩歌作品

【短歌7首】ふくみわらい — 丸山るい

ふくみわらい   丸山るい かなしみが鼻と目玉を通過しておかしな顔をあなたにさせた 顔のしみにわかにふえて蜘蛛の子の殖えてまひるの月を横切る 鳩が思うより自動車はすばやくてときどき轢かれてしまうわかるよ ふくみわらいのように...
詩歌作品

【短歌15首】TOKYO 2020 (2) — 牛尾今日子

TOKYO2020 (2)    牛尾今日子 ぜんぶ終わればお花見に行くさかずきはだまされた人・だました人へ  * 後ろボタン式のブラウス 後ろ手にボタンがとまったのを確かめて 目覚ましが鳴っているのを罵りと聞くうちに二度寝して見る...

【きょうは傘とか歌ありがとう 1】谷じゃこ『クリーン・ナップ・クラブ』 ― 笠木拓

歌人の笠木拓さんが毎月一冊の歌集を取り上げる歌集評連載。第一回は谷じゃこ『クリーン・ナップ・クラブ』です。*** (執筆者:笠木拓)  谷じゃこさんの短歌を読んでいると、真面目だなあといつも思う。  ピザまんの紙を夕日...
歌会記

うたポル歌会記―睦月都、吉田恭大、温(2021年9月9日)

参加者 睦月都(むつき みやこ)@xen_00 かばん所属。「神保町歌会」「うたとポルスカ」運営。 吉田恭大(よしだ やすひろ)@nanka_daya 「北赤羽歌会」「うたとポルスカ」運営。塔。第一歌集『光と私語』(二〇一九年...
詩歌作品

【短歌7首】アイスホテル — 沢茱萸

アイスホテル    沢茱萸 傷ついた心を癒やす友だちや恋人蜂蜜に浮いた蜂 旅をする想像をするだけでもう哀しいカルダモン抜きのチャイ ノルウェーの氷のホテルに家具はない吐息がしろく見えているだけ かわいいおじさんのうしろになら...
詩歌作品

うたとポルスカ通信vol.2 井の頭公園時間差吟行編+特別ゲスト作品公開のおしらせ

2021年8月29日、第2回オンライン短歌市開催にあわせて期間限定配布しました「うたとポルスカ通信vol.2」の内容に、今回新たに特別ゲストをお招きし、Web公開します。 「うたとポルスカ」のフリーペーパー第2弾。今回は『井の頭公園...
詩歌作品

【井の頭公園時間差吟行】八月二十三日(月) — 吉田恭大

八月二十三日(月) 吉田恭大 音のする方へ水門通りを下り、下るとそこに水門がある 行き交えば犬と歩いている人と、犬を抱えて歩いてる人 平日の夜に明るい改札を背にして出てくるのも市民たち この池に鴨を放したことがあり、その後の...
詩歌作品

【井の頭公園時間差吟行】井の頭池をそぞろ巡りて 九月五日(日) — 奥村晃作(特別ゲスト)

井の頭池をそぞろ巡りて 奥村晃作 整理券持たざる我は動物園入はいれず池の巡りを歩く コナラとう名なれど古木大樹にて苔蒸す幹を枝をし見上ぐ エゴの樹はまん丸の小ちさき青き実を葉は間あいに付けて池のべに立つ 作りたる己おのが網いの巣の中...
詩歌作品

【井の頭公園時間差吟行】八月十五日(日) — 原田彩加

八月十五日(日) 原田彩加 雨の日は視線が下がりがちになる水面のツツイトモを見ている 見るべきは池の水草、水草に刺さった缶の底の銀色 水中で生きるタイプの水草が雨の日は手を伸ばそうとする 雨ざらしのチラシをもらうしっとりと湿ったそ...
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