【短歌7首】ふくみわらい — 丸山るい

    ふくみわらい     丸山るい

かなしみが鼻と目玉を通過しておかしな顔をあなたにさせた

顔のしみにわかにふえて蜘蛛の子の殖えてまひるの月を横切る

鳩が思うより自動車はすばやくてときどき轢かれてしまう  わかるよ

ふくみわらいのようにそよいでこの庭のいつまでも咲かないさるすべり

禽獣の電子図鑑をながめてはひとつずつ押す〈声〉のボタンを

めくれている立入禁止のステッカー  指のちからを誰かがかけて

非常口のちいさな人を踏みながら非常口のある方へ向かった

◇丸山るい(まるやま  るい)
@in_ruins  東京都在住。家に猫がいます。

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