【短歌15首】TOKYO 2020 (2) — 牛尾今日子

    TOKYO 2020 (2)      牛尾今日子

ぜんぶ終わればお花見に行くさかずきはだまされた人・だました人へ

 *

後ろボタン式のブラウス   後ろ手にボタンがとまったのを確かめて

目覚ましが鳴っているのを罵りと聞くうちに二度寝して見る夢

責任があるにしたってどれぐらい?   暑さであがる海抜ぐらい?

坂道を下ったままの道なりに歩きつづけて階段もおりる

オリンピックの名前を出して盛り上がるオリンピックは登録商標

働いてきて帰宅して汗が出ていて座りこむしばらく汗は

東アジアの日本の東京の   シニシズム   畳の床で寝る

ラジオから誰か終わりのあいさつを待ってるというわけでもないが

イエグモが跳ねていくのを見ることはイエグモを飼っているようなもの

八月はひとり一枚やけどした舌をしまってずっとつづくの

眠ろうと心臓に合わせて数をかぞえてそのうちに見失う

緑道になった水路に残された小さな橋がなんども架かる

海に行けば海の生活  山に行けば山の生活  都市には都市の

手のひらに触れてつめたい胴体をタオルケットにくるんで眠れ

◇牛尾今日子(うしお  きょうこ)
京大短歌会OG。羽根と根、八雁に所属。

◇参考 【短歌7首】TOKYO 2020   牛尾今日子

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