【短歌7首】水のほつれ — 小田島了

詩歌作品

    水のほつれ    小田島了

傷つくほどの重みもなくて散らばったグラスの破片を踏んづけていく

おそらく水がたまるのだろう裏口に親指ほどの苔のかたまり

内側につぶれるように向日葵が枯れてしずかに苦を抜けていた

柑橘類の果肉のように透きとおり日なたの水に羽虫がまじる

寝巻きのままで夜の川原に降りていくたくさんの子供たち さようなら

涙腺をなみだがとおっていくときにいっしょに押し出されている空気

昨日の水の残りを飲んで飲みほしてつづいていくことを確かめる

◇小田島了
好きな歌人:笹原玉子  好きな料理家:細川亜衣  好きなアニメ:電脳コイル

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