井の頭池をそぞろ巡りて 奥村晃作
整理券持たざる我は動物園
コナラとう名なれど古木大樹にて苔蒸す幹を枝をし見上ぐ
エゴの樹はまん丸の
作りたる
水中に組まれし丸き石が皆古びし厚き水垢まとう
四本の脚をツイツイ動かして
池の
かいぼりを繰り返し池を清めたるかいぼり隊のボランティア達
水草の上に浮き寝のカルガモの己が
カイツブリいきなり走りつるみ飛ぶトンボの一羽を
井の頭池を満たせる大量の水はどこから流入するか
井の頭池にお店はあまたあれど酒類は売らず宣言下にて
◇奥村晃作(おくむら こうさく)
@okumura80kousak 一九三六年、長野県飯田市生まれ。〈ただごと歌〉〈気付き、発見、認識の歌〉を好んで歌う。著作多数。『奥村晃作歌集』(砂子屋書房)など。
九月五日、日曜日。井の頭公園に出かけた。池の巡りを二時間余り、ゆっくりと巡り歩いた。たまたま出会った動物や植物などを歌に作ってみた。一人吟行は、初めての試みだが、楽しく、豊かな時間を賜った。