【短歌15首】些事 — 安田茜

    些事    安田茜

限界が背中のあたりまで来てるホログラムっぽい雷雨をみてる

依存先を提供しますそのかわりわたしの廃道になりなさい

コンビニを出ればたばこが香るんだいつもふんわりいつもの夜に

こわれてるこころのほうが向いているおしごとをしていますゆめのなか

ヨーグルトに砂糖をいれるかいれないかきみだけが決められる些事だね

わたしの暮らしは乾いていません  むらさきの液体みたいな曲かけている

悪魔の声ならyoutubeで聴けるってふつうの生活のまめちしき

きみたちの言う尊さはわからないけれどもまっすぐの夜道ゆく

地獄ってどんな匂いがするのかを、けむりのうごきを目で追いかける

はつなつのいいや真夏のあけがたの雨のときだけ入れる館

ありえない色の炎をともだちと見たあとともだちは泣いていた

塩とアイスの共通項は賞味期限がないこと  パーフェクト・フルコンボ

ねむたさがゆったり花を散らしてはつぎのつぼみを準備している

ふぞろいなチェスをあつめていることのほかにはなにも教えてくれなかった

それなんて宝石ですか  閃光を背負って無表情のこんにちは

◇安田茜(やすだ あかね)一九九四年京都生まれ。現在は短歌誌「西瓜」所属。第四回笹井宏之賞・神野紗希賞。



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