涌田悠第四歌集『川風の星』 抄

涌田悠第四歌集『川風の星』は2022年3月に上演された同名のダンス公演と共に制作されました。この度、うたとポルスカでの販売に合わせ、収録作から涌田さんに自選していただいた8首をご紹介します。
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しゃがんだら運河の底で透明なたぶんわたしの心臓を吐く

あじさいにふれるてのひらふつふつとだれの臓器にふれられている

遠い夏に駆ける少年の抱えてる用途不明の段ボール箱

欄干に立つ両足のあいだからわたしは川へ生まれつづけた

生きているものはくさくて川風に赤子の声の滲むベランダ

ビルの角に心を置いた  歯の裏にレタスサンドが張り付いていた

向こう側の欄干に立つパパに似た首の角度のパパじゃない人

むすんだらひらくひだりのてのひらの空き地のふくらみゆく音のする

◇涌田悠(わくた はるか)
短歌を詠むダンサー/振付家。2014年より作歌を始め、自作の短歌と共に踊るソロ作品“短歌deダンスシリーズ”を展開。
Webサイト https://haruka-wakuta.com/



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