八月二十一日(土) 睦月都
葉洩れ陽を白い日傘にうけるとき浮きあがる屋上遊園地
鳥獣保護区に入りつつ反芻してゐたり女のひとの子どもを産む夢
サンペレグリノの緑の瓶をつたひゆく汗・ねむくなる・ひとりでゐると
ひぐらしの水面さわだつこゑがしてその水源にふれたしと思ふ
ひぐらしの姿は見えず音のみが八月の血を透過してゆく
やぶめうがの名を知りたればやぶめうがばかりがつやめく籔のなかなり
五時の鐘鳴りておどろく 帰らなくてはいけない家があつた気がして
ポケットのないスカートのやうな夜の裾で置き場なき手の熱を逃して
◇睦月都(むつき みやこ)
@xen_00
かばん所属。「神保町歌会」「うたとポルスカ」運営。
午後三時半頃、吉祥寺駅着。小さな飲食店の並ぶ通りには「酒類の提供は行っておりません」と書かれた看板と「お酒飲めます」と書かれた看板とが入り乱れて、黙示録的景観を構成している。思っていたよりも人が多い。三鷹の森方面へ、公園を奥へ、奥へと歩いていくと、だんだんと人間よりも油蝉が、油蝉よりもひぐらしが多くなってくる。ここで前、写真を撮ってもらった。ここで並んでおしゃべりをした。飛び石をてんてんと飛び移るように、誰かとここに来た記憶ばかりが蘇る。あなたとの記憶はまだない。玉川上水沿いをしばらく上りに歩いて、同じ道を下る。