【短歌20首】アドベントカレンダー — 笠木拓

    アドベントカレンダー    笠木拓

 

枕辺のノートに岸と岸つなぐスパイラルあり朝につめたし

うつしよの丘なるZOOへ秋晴れと呼ぶのもきっと最後の午後に

内腿はほのかに斑の淡いこと見せつつよぎりゆくきりんかな

からっぽな湯殿のふちをいちれつにめぐるカピバラめぐるよよっつ

ゆうさりの池に真鴨はエメラルドの都の色の首をすくめて

半身をりんとひからせおのおのが影負う苔の上のどんぐり

おこる?  って訊かれてさびしかったこと心に柿の黒点ほどに

珈琲を飲んでからする夜歩きは言葉がむしろろころこ眠い

ことさらに遠い一人がいた夜もいまでは遠く満月に暈

かき消してくれる雨音なら来ない夢の観覧車で泣きじゃくる

かたわらの椅子に腰かけあかときの硬貨式誘睡乾燥機

待つとなく待つせわしさに箔の星またたくクリスマスカード

約束が駅舎にひとを立たしめるオーナメントの天使のように

葡萄酒を飲みくだすとき喉という焼け野を越えて汗血馬ゆく

おまたせとまたねのあいにラザニアの地層があって分けて崩せり

よけたけど酔っていたのですこし踏むぎんなんの実のださいにおいだ

とどかない夜の近さに街路樹の銀杏黄葉は身内より照る

夜をゆくドアに凭れて聴いている霜月尽の鉄橋のおと

チャイ注げばたきぎのにおいにんげんとお酒を飲んで遊んだあとの

日に一つ扉をあけて小部屋へと光を招くアドベントカレンダー

◇笠木拓(かさぎ たく) 1987年生まれ。歌集『はるかカーテンコールまで』(港の人、2019)。「遠泳」同人。富山市在住。
2024年3月24日(日)歌集批評会 in 京都やります! 『はるかカーテンコールまで』歌集批評会



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