八月十五日(日) 原田彩加
雨の日は視線が下がりがちになる水面のツツイトモを見ている
見るべきは池の水草、水草に刺さった缶の底の銀色
水中で生きるタイプの水草が雨の日は手を伸ばそうとする
雨ざらしのチラシをもらうしっとりと湿ったそれをかばんにしまう
同じ顔ならんで雨に濡れているスワンボートの胸に番号
雨のなかスワンボートは繋がれて鏡のような眼をしているな
人のいないボート乗り場の裏手ではボートが水に身を寄せ合って
立ち止まる人に気づいて泳ぎ去るカイツブリたちそれは正しい
石を這うなめくじの身体が伸びて半透明のなかに斑がある
電話ボックスの眩さ気がつけばずいぶん暗い道をきていた
◇原田彩加(はらだ さいか)
@sai_sai13
第一歌集『黄色いボート』(2016年・書肆侃侃房)
井の頭公園を目指して、マルイの横の道に入ったところで(こっちじゃなかった)と引き返した。駅の反対側へ行き、パルコの横の道をかなり歩いたところで(最初の道であってた)と気づいた。過去に戻れたら、あのとき、突き当りに公園の緑が見えていたはずだ。そのまま歩いて行けばよかった。過去に戻れたら、と想像してしまうのは、それができるような気がするからだ。水に潜ったり、空を飛んだりするよりは、できる気がする。